工事経歴書の記載要領
工事経歴書には完成工事と未成工事を記載します。完成工事とは、申請又は届出をする日の属する事業年度の前事業年度に完成した建設工事をいい、未成工事とは申請又は届出をする日の属する事業年度の前事業年度末において完成していない建設工事をいいます。
建設工事の種類
工事経歴書は建設工事の種類ごとに作成しますので、「建設工事の種類」には該当する建設工事の種類を記載します。
税込・税抜
請負代金について消費税込みで記載する場合は「税込」を、消費税抜きで記載する場合は「税抜」に〇します。なお、経営事項審査を受ける場合には税抜で記載します。
注文者
「注文者」の内容により個人が特定されないようにするため、注文者が一般人の場合はそのイニシャルを記入します。また、下請工事については、「注文者」の欄には下請工事の直接の注文者の商号又は名称を記載します。
元請又は下請の別
元請工事とは、発注者から直接的に請け負った建設工事をいい、下請工事とは発注者から間接的に請け負った建設工事、すなわち、元請人から請け負った建設工事をいいます。
「JVの別」
「JVの別」の欄は、共同企業体(JV)として行った工事について「JV」と記載します。
工事名
「工事名」の内容により個人が特定されないようにするため、工事名に一般人の名前がある場合にはそのイニシャルを記載します(例:S邸工事)。また、下請工事については、「工事名」の欄には下請工事の名称を記載します。
「配置技術者」
「配置技術者」の欄は、完成工事について、法第26条第1項又は第2項の規定により各工事現場に置かれた技術者の氏名及び主任技術者又は監理技術者の別を記載します。また、当該工事の施工中に配置技術者の変更があった場合には、変更前の者も含むすべての者を記載します。監理技術者補佐を置いた場合又は特定専門工事に該当し主任技術者を配置しなかった場合はその旨を記載します。
「請負代金の額」
「請負代金の額」の欄は、共同企業体として行った工事については、共同企業体全体の請負代金の額に出資の割合を乗じた額又は分担した工事額を記載します。また、工事進行基準を採用している場合には、当該工事進行基準が適用される完成工事について、その完成工事高を括弧書で付記します。
「請負代金の額」の「うち、PC、法面処理、鋼橋上部」の欄は、次の表の(一)欄に掲げる建設工事について工事経歴書を作成する場合において、同表の(二)欄に掲げる工事があるときに、同表の(三)に掲げる略称に丸を付し、工事ごとに同表の(二)欄に掲げる工事に該当する請負代金の額を記載します。
- (一)土木一式工事(二)プレストレストコンクリート構造物工事(三) PC
- (一)とび・土工・コンクリート工事(二)法面処理工事(三) 法面処理
- (一)鋼構造物工事(二)鋼橋上部工事(三) 鋼橋上部
「小計」
「小計」の欄は、ページごとの完成工事の件数の合計並びに完成工事及びそのうちの元請工事に係る請負代金の額の合計及び「PC」、「法面処理」又は「鋼橋上部」について請負代金の額を区分して記載した額の合計を記載します。
「合計」
「合計」の欄は、最終ページにおいて、すべての完成工事の件数の合計並びに完成工事及びそのうちの元請工事に係る請負代金の額の合計及び「PC」、「法面処理」又は「鋼橋上部」について請負代金の額を区分して記載した額の合計を記載します。
工事を記載する順番
経営事項審査を受審しない場合
経営事項審査を受審しない場合は工事経歴書は1枚提出すれば済みます。そして、工事経歴書の1枚には工事を記載できる行が13行あります。基本的にこの13行を全部埋めます。
すなわち、未成工事がないとき、完成工事につき請負代金が大きい順に13件記載します。請負代金の大きい順に上の行から記入するので、工期順に記入したり、元請後に下請を記入したりしません。
これに対し、未成工事があるとき、完成工事につき請負代金が大きい順に10件記入し、1行空けて未成工事を2件記入します。なお、管轄官庁によって記載方法の取扱いが異なる場合があります。
また、完成工事と未成工事を合わせて13件以下であれば完成工事と未成工事をすべて記入します。
経営事項審査を受審する場合
経営事項審査を受審する場合の工事経歴書の記載は3段階に分かれます。
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1元請工事の完成工事
まず、元請工事の完成工事につき、請負代金の大きい順に記載します。そして、記載した請負代金の合計額が、すべての元請工事の完成工事の請負代金合計額の7割を超えると記載は終了です。もっとも、次のいずれかの場合にはその時点で記載終了です。
- 請負代金が500万円(建築一式工事の場合1,500万円)未満の工事を10件記載した場合
- 記載した請負代金の合計額が1,000億円を超えた場合
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2それ以外の元請工事及び下請工事
次に、1で記載した工事以外の元請工事及び下請工事につき、請負代金の大きい順に記載します。そして、記載した請負代金の合計額が、すべての完成工事の請負代金合計額の7割を超えると記載は終了です。もっとも、次のいずれかの場合にはその時点で記載終了です。
- 請負代金が500万円(建築一式工事の場合1,500万円)未満の工事を10件記載した場合
- 記載した請負代金の合計額が1,000億円を超えた場合
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3未成工事
最後に主な未成工事につき、請負代金の大きい順に記載します。
工事経歴書作成上の注意点
工事経歴書は建設業許可関連書類の中でも作成に手間がかかる書類です。そして、工事経歴書は建設業許可の新規申請だけでなく、決算変更届の際にも作成します。工事経歴書のひな型・記入例は建設業許可申請と決算変更届出で同じです。ここでは工事経歴書作成上の注意点を説明します。
一式工事の下請禁止
土木一式工事及び建築一式工事の工事経歴書においてはこれらの工事特有の注意事項があります。すなわち、土木一式工事又は建築一式工事の工事経歴書に「下請」と記載することは原則認められません。理由は次の通りです。
建設業法22条は一括下請負を禁止しています。
また、土木一式工事とは、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。)を、建築一式工事とは、総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事をいいます。
建設業法22条の一括下請の禁止規定と、土木一式工事及び建築一式工事の定義より、土木一式工事及び建築一式工事が下請工事に該当することは通常想定できません。これが土木一式工事及び建築一式工事の工事経歴書に「下請」を記入できない理由です。
実務経験
工事経歴書は建設業許可を受けた建設工事以外の工事(その他の工事)に関するものも作成しておくべきです。なぜなら、工事経歴書は実務経験を裏付けるものだからです。すなわち、その他の建設工事の工事経歴書は、今後専任技術者の実務経験を証明する資料になりえます。
どういうことかというと、今後実務経験を積んで建設工事の専任の技術者の資格を得ようと考えている場合、実務経験と、過去の「工事経歴書」及び「直前3年の各事業年度における工事施工金額」の記載が整合する必要があります。
例えば、熱絶縁工事の建設業許可を受けている者が、今後管工事の実務経験を得て管工事の建設業許可を取得予定だとします。しかし、工事経歴書に熱絶縁工事のみを記載していれば「工事経歴書」及び「直前3年の各事業年度における工事施工金額」の記載から管工事の経験を証明することができません。
よって、今後実務経験積もうと考えている場合は工事経歴書は正確に作成する必要があります。
専任技術者と主任技術者
工事経歴書の主任技術者欄には漫然と専任技術者を記入すればよいという訳ではありません。なぜなら、営業所の専任技術者と工事現場の主任技術者は原則兼務ができないからです。
例外的に営業所の専任技術者と工事現場の主任技術者を兼務できるのは次の場合です。
- 当該営業所において請負契約が締結された建設工事であって、工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事しうる程度に工事現場と営業所が近接し、当該営業所との間で常時連絡をとりうる体制にあるものについては、当該営業所において営業所専任技術者である者が、当該工事の現場における主任技術者又は監理技術者(法第26条第3項に規定する専任を要する者を除く。以下「主任技術者等」という。)となった場合についても 「営業所に常勤して専らその職務に従事」しているものとして取り扱う(国総建第18号平成15年4月21日)。
よって、専任技術者と主任技術者が同じ場合、工事経歴書作成時には、営業所と工事経歴書の工事現場が遠方でないか確認しなければなりません。
工事現場専任
建設業法26条3項は、「公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの」については、主任技術者又は監理技術者は工事現場ごとに専任の者でなければならないと規定しています。そして、建設業法施行令27条1項はこの「政令で定めるもの」について規定しています。
すなわち、個人住宅を除くほとんどの工事で、工事1件の請負金額が4,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上の工事では主任技術者又は監理技術者は工事現場ごとに専任の者でなければなりません。
そのため、上記に該当する工事においては営業所の専任技術者をその工事現場の主任技術者にすることはできません。
他の書類との整合
下記の金額は全て一致します。
- 各建設工事の工事経歴書の「合計」をすべて足した金額
- 「直前3年の各事業年度における工事施工金額 」の直近年度の「合計」の金額
- 損益計算書の完成工事高の金額