確定申告
確定申告書に貸借対照表を添付している場合、建設業許可における貸借対照表は確定申告のそれを基に作成します。しかし、確定申告書に貸借対照表を添付していない場合、すなわち確定申告時に貸借対照表を作成していない場合、建設業許可申請や決算変更届出時に建設業許可用の貸借対照表をゼロから作成する必要があります。とりわけ事業主借勘定及び事業主貸勘定の計算は貸借対照表を作成したことがない方にとっては骨が折れる作業です。
そもそも、事業主借勘定及び事業主貸勘定は、損益計算書の経費と同様に日々の帳簿記入の賜物です。そのため、決算時にまとめて貸借対照表を作成しても、実態に即した事業主借勘定及び事業主貸勘定を作成することはできません。しかし、確定申告時に貸借対照表を作成していなければ事実上建設業許可申請時や決算変更届出時にまとめて作成することになります。ここではこのような場合の貸借対照表の作成方法を説明します。なお、この方法はあくまで応急措置的な方法ですので、次年度以降は節税のためにも確定申告時に貸借対照表を作成することを推奨します。
貸借対照表記載の流れ
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1流動資産、固定資産、流動負債、固定負債を記入する。
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2期首資本金を記入する。
また、令和2年分の貸借対照表がない場合、令和3年分の貸借対照表の「期首資本金」の値は、「令和2年12月31日時点の資産合計」ー「令和2年12月31日時点の負債合計」の値です。
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3事業主利益を記入する。
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4負債純資産合計を記入する。
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5純資産合計を記入する。
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6事業主借勘定又は事業主貸勘定を記入する。
そして、この計算式の値がマイナスであれば事業主貸勘定にその値を記入し、事業主借勘定は空欄です。多くの場合、この計算式の値はマイナスになります。
例えば、令和3年度の純資産合計が100、令和3年度の期首資本金が200、令和3年度の事業主利益が300とします。それぞれの値をこの計算式に当てはめると、「100-200-300=-400」となります。そして、-400の値を事業主貸勘定に記入します。なお、事業主貸勘定に記入する場合、「ー」(マイナス)の記号は貸借対照表の事業主貸勘定欄に「△」で表記されています。そのため、「ー」の記入は不要です。
逆にこの計算式の値がプラスであれば事業主借勘定にその値を記入し、事業主貸勘定は空欄です。
個人の貸借対照表の勘定科目
貸借対照表は作成対象年度末時点の金額を記入します。
流動資産の勘定科目
現金預金
事業用の現金と事業用の預貯金の合計額を記入します。
受取手形
受取手形の金額を記入します。
完成工事未収入金
建設業に関わる売掛金の金額を記入します。兼業などの建設業以外にかかわる売掛金は「売掛金」の勘定科目を作成し、記入します。
有価証券
株式などを記入します。
未成工事支出金
未完成の工事に支出した金額です。
材料貯蔵品
貸倒引当金
固定資産の勘定科目
建物・構築物
構築物とは土地に定着する土木設備又は工作物です。
機械・運搬具
自動車は運搬具です。自動車は未償却残高を記入します。
工具器具・備品
土地
建設仮勘定
破産更生債権等
流動負債
支払手形
持っている支払手形の金額を記入します。
工事未払金
建設業に関わる買掛金の金額を記入します。兼業などの建設業以外にかかわる買掛金は「買掛金」の勘定科目を作成し、記入します。
短期借入金
決算期後、 1 年以内に返済される借入金です。
未払金
決算期後 1 年以内に支払われるものです。
未成工事受入金
未完成の工事に対して受け入れた金額です。
固定負債
長期借入金
期借入金以外の借入金です。
純資産の部
期首資本金
前期の純資産合計の金額です。
事業主借勘定
事業の支出をポケットマネーから支出した場合の勘定科目です。例えば、接待交際費をポケットマネーから支出した場合です。
事業主貸勘定
事業以外の支出を事業資金から支出した場合の勘定科目です。例えば、所得税を事業資金で支払った場合です。